このラマースという人物は、ケイシーの透視能力は医学に限定されないはずだと考えました。適切な暗示が与えられるなら、科学であろうと、哲学宗教に関してであろうと、また考古学や未来予測、オカルトなどについても、普遍的な視点から解答を与えられるに違いないと考えたのです。
左からアーサー・ラマース、グラディス・ディヴィス(リーディング速記記録者)、エドガー・ケイシー
そこで、ケイシーに対して、ラマース自身のホロスコープを解釈するという、当時のケイシーには想像もできないようなリーディングを依頼しました。
ケイシーは、そのような能力があるかどうかはなはだ不安でしたが、ラマースの熱意にほだされて、やるだけやってみることにしました。
いつもと同じ調子で自己催眠に入ったケイシーではありましたが、その時は病人の体を診るのではなく、その人の誕生時の惑星の配置から、依頼者の性格や運命的傾向を読もうというのでした。しかし、いったん催眠状態に入ると、いつもと同じように威厳のある声で、ホロスコープが解読されていったのです。そしてリーディングの終了間際に、ケイシーは「彼は前世で修道士であった」と漏らしたのです。
催眠から醒めたケイシーは自分の発言に非常に狼狽しました。彼は、クリスチャンとしての信仰生活を誠実に全うすることを最も大切にしていたのですが、その自分が、キリスト教の思想と相容れない「生まれ変わり」を肯定してしまったのです。
ケイシーは、自分は悪魔に操られているのではないだろうかと、真剣に悩みました。そして、リーディングを一切放棄することすら考えました。しかし、ラマースの「疑問があればあなた自身のリーディングに質問してみるべきだ」というアドバイスと、母親の「あなたの力が神に由来するのであれば、善だけをもたらすはず」という言葉に促されて、自分自身の疑問をリーディングで検証してみることにしました。
数ヶ月におよぶ研究と考察の末、ついにケイシー自身、生まれ変わりの概念はクリスチャンの信仰を危うくするものではなく、むしろ信仰を高め完成するものであることを納得するようになりました。ここにリーディングの新しい分野、「ライフ・リーディング」が誕生しました(従来の病気治療のリーディングは「フィジカル・リーディング」として区別されるようになる)。
これ以降、ケイシーの元には、病気の診断と治療法を求めるフィジカル・リーディングと、才能や適職、人生の諸問題に対するアドバイスを求めるライフ・リーディングの依頼が来るようになったのです。